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2日目は会場を三根公民館に移し、22日午後1時30分から行われました。前夜講演した鈴木敏弘先生に、東農大大学院の真崎祥子さん・大西美沙希さん、八丈島からチーズ職人の魚谷孝之さんとくさや製造に携わる長田隆弘さんが加わり、「伝統文化由来の乳酸菌と新しい乳製品の開発」をテーマにパネルディスカッションが行われました。
冒頭、2025年2月に、クサヤ液から分離した乳酸菌で作った「くさやヨーグルト」が独特の香りから解放された味わい豊かな飲み物として「にっぽんの宝物」の「進化と伝統部門」でグランプリを獲得、6月に大阪・関西万博で行われた世界大会で紹介された経過が映像で紹介されました。
続いて、東京農大で醸造学を専攻、大学院で発酵食品化学を研究している真崎さんと大西さんは、「クサヤの美味しさを科学的に証明したい」、「クサヤ液に棲む微生物から新しい抗生物質のもとになる放線菌を分離したい」という強い思いから長田さんと出会ってクサヤ液の提供を受け、それをもとに根気強く研究を進めた経過を語りました。
クサヤとヨーグルトとの出会いは、チーズ作りに理想的な環境を求めて2013年に八丈島に移住した魚谷さんが報告しました。魚谷さんが島の暮らしで直面したのは毎年100人規模で進む急激な人口減少でした。八丈島産ジャージー牛乳を原料にチーズやヨーグルトを作っていた魚谷さんは、伝統文化と科学の融合に八丈島の持続可能性を見いだし、長田さんを通じてクサヤ液の微生物からの乳酸菌分離を東農大研究グループに依頼しました。
クサヤ液が取り持った共同研究は、「くさやヨーグルト」に結実しました。これが産業として成長するにはまず原料となるトビウオやムロアジの確保が課題ですが、今は網を使った漁法の技能伝承に補助される東京都の補助金で細々と漁が行われているのが現状です。また、ヨーグルトやチーズの製造に必要な量の乳酸菌の確保も課題です。八丈高校園芸科の関与など、他の分野と提携して発展する「水平展開」の可能性が期待されます。
クサヤを科学の目で見ることから得られた成果を他の分野に応用した「くさやヨーグルト」は、伝統産業が直面する「担い手不足」「原料不足」といった産業存続とその危機の背景に目を向け、課題克服への道筋を示唆する指標といえます。〈受講者49人〉
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